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性に溺れる私
第2章 【先生の監視】
お願いした通り猪俣くんは私を迎えに来てくれた。
「まだ彼氏じゃなかったんだね?ごめんごめん」なんて先生に言われてまた赤面してる。
「なに、その余裕ぶり」
「え?」
「何か俺だけイジられてない?」
保健室を出て廊下の壁をつたいながら歩く。
少しだけ足も引きずる感じ。
相当な負担かかってたんだなって改めて思う。
ゆっくり歩幅を合わせてくれる猪俣くん。
時折「大丈夫?」と手を貸してくれようとするけど恥ずかしいのかすぐ引っ込める。
「藍沢…」
背後からそう呼ばれて頬の筋肉がピクッと動く。
振り返らなくても誰だかわかる。
何を考えているの?
こんな公衆の面前で。
たかが教師と生徒と見られていても決して馴れ合いなどして欲しくなかった。
「体調は…もう大丈夫なのか?」
意を決して明るく振り返る。
「すみません、榊先生。寝不足だったみたいで少し寝たら楽になりました〜次の授業から出れそうです!」
嘘つきな唇がペラペラと喋る。
意味のない笑顔も瞬時に出来る。
「そうか、なら良かった」
「教室戻ります、猪俣くん行こ?」
生徒が大勢居るの。
だから早く背を向けて離れて。
私も猪俣くんに甘えて腕を掴ませてもらった。
教室に戻ると皆から声をかけられひとつひとつに礼を言う。
「あ……穂高くん、居たんだ?」
ヤバっ、失言。
ムッスーと不貞腐れてる…?
理由を聞いて大笑いした。
何でも、ジャンケンで連続負けして教室に残ることになったらしい穂高くん。
本当は保健室に来てくれようとしてたみたい。
それを猪俣くんが止めたんだって。
「お前絶対に煩くするだろ迷惑ばっかかけるから俺だけで良いって言ったの!」
そういうことでしたか。
休みなのかなって思っちゃった。
「俺だって心配したんだからな」
「ありがとう、穂高くん」
「お、おう」
数秒間見つめ合ってフッと笑うとご機嫌直ったね。
本当、わかりやすい。
同級生なんかにこの手は使わない主義だったけどもうどうでもいいや。
先生……私、初めて反撃するかも知れない。