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性に溺れる私
第5章 【支配する悦び】
「あーあ、さっきの大森きっと勘違いしてるよなぁ、あんな至近距離で笑顔見せられてさ。大樹見てなくて良かったね?」
「何が言いたいの?」
「貪欲なんだなぁ〜と思って!見た目は違えど俺たち似てるとこあるんじゃね?」
「アホらし…」
「ちょっと待った」
行く先を阻む壁ドン。
ドラキュラにされてもね。
呆れた視線を向けてあげたら。
「今アイツ廊下で捕まって撮影会の餌食になってるよ、玲奈のお陰で」
「そう、そろそろ行かなきゃならないから退いてくんない?」
「じゃ、一回だけ練習させてよ」
「え…?きゃっ…!!」
腰から引き寄せられ首筋に噛みつく真似をした。
実際には跡がつかないくらいの甘噛み。
「ちょっと…っ」
「どっかで俺との時間作って?」
私にだけ聞こえるようなか細い声。
「じゃないと本当に噛みつくよ?」
「あのねぇ…っ」
言い返してやろうかと思ったら同じメイクチームの子が入って来た。
「玲奈ちゃんそろそろ調理…補助…っ」
テンパってる。
固まってるけどめっちゃ見られてる。
言い訳つかぬこの事態。
首筋噛みつかれてるってどんな状況よ。
これ、はっきり言って誤解だから。
「あぁ、違う違う。そんなんじゃないから、血を吸う練習?ドラキュラだし?びっくりさせようとやり過ぎちゃった感はあるけど」
もっとマシな言い訳しなよ。
余計怪しいわ。
「ごめん、調理チームのとこ行こう」
「あぁ、うん」
そそくさとその場を立ち去る。
この後散々聞かれたけど
「私には大樹だけだよ」と惚気けるしかなかった。
穂高のやつ……絶対時間なんて作ってやんない。
コスプレ喫茶は大盛況で調理場も常に忙しかった。
「玲奈〜?」と休憩に入った大樹がこっちの様子を見に来た。
勿論一緒に休憩する約束はしていたけどかなり人手が足りてなくて私が抜けると更に回らなくなるのは確実。
「俺も手伝うよ」
「えっ?」
「落ち着いたら二人で抜けよう?」
「うん、メイク直しはその後ね」