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わたしを見ないで
第5章 新人キラー
「それとも、このあと飲みに行かない?美味しいとこ知ってるんだ。もちろん奢るよ」

「悪いけど、わたし彼氏いるから外では会えないの」


 ハッキリ断ると、たいていのクソ客は目をぱちぱちさせる。
 わたしのような押しに弱そうに見える子が意外と気がキツイことにショックを受けるのだろうか。


「彼氏がいるのに風俗なんかやって、彼氏は何も言わないの?バレない?」


 だいたいのクソ客は、わたしが彼氏の話をするとこんなことを訊いてくる。
 だからわたしは満面の笑みで、ハッキリとこう言ってやるのだ。


「お客さんには関係ないでしょ」


 ってね。


 

 このアイデアをくれたのは篤志くんだった。
 もちろんわたしには彼氏なんていない。
 人生で一度もいたことがない。



「初対面で店外要求する客はほぼ指名返さないから、てきとうに彼氏がいるとか言ってあしらっておけばいいよ」



 篤志くんは3回目にわたしに会いに来たとき、ちょっと得意気にそう言った。
 わたしは篤志くんのを舐めながら、

「じゃあ、番犬みたいなお客さんにそう吹き込まれてるから無理って言おうかな」

 と言うと、篤志くんは「ワンワン」とふざけて笑った。


「篤志くん、明日は仕事なの?」


 篤志くんのが入ってきたとき、わたしは篤志くんの腕をしっかり掴んで顔をしっかり見つめながら訊いた。
 怪訝な顔をする篤志くんが見たいからだ。
 案の定篤志くんは眉間にシワを寄せ、腰を動かし始めながら言った。



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