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地味子が官能小説を書いたら
第1章 放課後の図書館
---------- 【序】秘密のバイト① ----------
「ちょっと、お話しをさせていただいても良いですか?」
昼下がりの渋谷、平日だというのにハチ公前の広場は人で溢れかえっていた。
工藤紗栄子(くどうさえこ)は、学校帰りに友達と待ち合わせていたのだが、そこで突然、見知らぬ男に声をかけられたのだ。
今日は、初夏の陽気で気温もかなり高くなっている。それなのに律儀にスーツを着て礼儀正しく振舞う男は、その慇懃さが却って胡散臭い印象を醸し出している。
こんな人がいっぱいいるところで大胆な、と紗栄子は思ったが、話を聞くとも聞かないともあやふやな態度を取っていた。
「あの、どこかの事務所に所属していますか?」
(事務所って、なんのこと?)すこしだけ男の話に興味が湧いたが、紗栄子は表面には出さず、男の出方を伺った。
「あ、申し遅れましたが、私、こういうものです」と言って、名刺を渡してくれた。
いかにも興味なさそうに、紗栄子は男には目もくれずに名刺を片手で受け取る。
名刺には、”芸能プロダクション 立花企画 代表取締役 立花謙佑”と書かれていた。
(代表取締役、すなわち社長自らスカウトかよ、怪しすぎるwww)
紗栄子が訝しがっているのにも構わず、立花は話を続けた。
「今、弊社では、新企画に参画してくれる新人を発掘していましてね」
「お綺麗な方だったので、どこか別の事務所に所属されているかな、と思ったのですが」
綺麗、と言われて悪い気はしない女はいない。実は、紗栄子は自分がかなり美人である事を意識している。
「もし、どこにも所属されていないのであれば、弊社に登録していただき、お仕事をしていただければと思った次第です」
「あ、もちろん今すぐにというわけではございません」
「もし、芸能活動にご興味がおありでしたら、お電話いただければと存じます」
「専属でなくても、バイトでも構いません。バイト代ははずみますから」
「女性の方に付きまとっていますと、お巡りさんに怒られますので、この辺で失礼させていただきます」
「ご連絡、お待ちしてますよ」
言いたいことを言い終えると、立花は、紗栄子の元を離れ、キョロキョロしながら、マークシティーの方へと歩いて行った。