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地味子が官能小説を書いたら
第3章 片思い
---------- 【序】秘密のバイト⑦ ----------
(どんなにおだてたって、アダルトビデオなんかに出てやるものか)愛想笑いを浮かべながら、紗栄子はここから逃げ出すタイミングを見計らっていた。
「そうだ、せっかく来たんだから、撮影現場を見学しない?」
「なかなか見れるものじゃないよ、一般の人には」
1万円ももらって、直ぐに帰るのもやや気が引ける、それに撮影現場という響きに興味をそそられた。まるで映画の撮影現場のような響きだ。
「はあ、じゃあ、見学だけ」
「そう来なくちゃ、さ、さ、こっちだよ」
立花に伴われ、紗栄子は一番奥の部屋へと入る。その部屋は、明らかに紗栄子がいた部屋とは違う。広くて立派な作りになっていた。
「ここはね、このホテル唯一のスイートルームなんだよ」
「どう、素敵でしょう」
立花が自慢げに説明する。中にはカメラが三脚に乗せられている、照明が3か所設置されており、釣り竿みたいなものにマイクらしきものがぶら下がっていた。
スタッフだろうか、年配の男性が2人、杏果もいる。
そして、紗栄子の目を引いたのは、紗栄子と同年代とみられる男の子だった。
身長はそれほど高くない。162cmの紗栄子より少し高いくらいか、しかし、すっきりとしたあごのラインに少し愁いを帯びた瞳、まつ毛は長く女の子のようだ。鼻筋も通っている。
いわゆる、イケメンだ。
つい、ガン見してしまう紗栄子、その視線に気づいたのか、その男の子はぶっきらぼうに言い放った。
「なに、俺の顔に何かついてる?」
(しまった!つい見とれてしまった、が、そんな言い方ないんじゃない!)
「別に、撮影現場が珍しかったからよ、別にアナタを見てたわけじゃないわよ」
(ふん!)と紗栄子はそっぽを向く。(ちょっとイケメンだからって、感じ悪い!)
「彼がね~、今日の男優さんで、海野海(うみのかい)くん、上から読んでも海野海、下から読んでも海野海」と立花が紹介してくれた。
(ブブー、受けるwww面白い名前だ)
「この子は紗栄子ちゃん、今日は見学と言う事で遊びに来てくれたんだ」
「はあ」海は、どうでもよさそうにそっぽを向く。
(なによ!超絶美少女が目の前にいるのに、それだけ?反応は)
どうにもムカつくヤツだ。