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地味子が官能小説を書いたら
第3章 片思い
---------- 【序】秘密のバイト⑧ ----------
紗栄子がむくれていると、杏果が近寄ってきて耳打ちした。
「紗栄子ちゃん、ちょっと良いかな?」
「ん、どうしたんですか?杏果さん」
「ちょっと、こっちに来てくれる?」と言って、杏果は紗栄子を女優の控室へと連れ出した。
「あの……どうしたんです?杏果さん」紗栄子は同じ質問を繰り返した。
どことなく、先ほどまでの凛とした態度の杏果とは違い、どうにもキレがない。
「その……言いにくいんだけど、やっぱり今日、出演してくれるのって無理かな?」
「ええーーー、どうしたんですか?さっきまで自信たっぷりだったじゃないですか」
「う……ん、そうなんだけど、男優さんが、当初予定してた人が来れなくなって」
「私もさっき知ったんだけど、あ、男優さんは別の事務所から派遣されてるの」
(ああーー、あの海とかいう奴、性格悪そうだから、杏果さんもいやなんだ)と勝手に納得する紗栄子。
「あの、海とかいう奴が嫌いなんですね、杏果さん」
「え、何でそうなるの?」
「だって、男優さんがイヤなんでしょ?」
「イヤっていうのは、その……そういう意味じゃなくて」
何とも歯切れが悪い、さっきまでの杏果はどこに行ってしまったのだと訝しがる紗栄子。
しばらく沈黙した後、ふー、と息を吐くと、覚悟を決めたように杏果は話し出した。
「海くんは、元カレなの」
「えええーーー」あひゃーといった感じで紗栄子は驚いた。(杏果さん何歳だろう、かなり年下なんじゃ)と余計な詮索をしてしまう。
「だったら、杏果さんの方が良いんじゃないんですか?お互いの事を良く知っているんでしょ?」
「だからイヤなのよ、プライベートのセックスみたいで、それに、仕事とはいえ別れた男とセックスするのは絶対にイヤ」
(そんなものなのかな~)と納得できない紗栄子だった。
「でも、わたし、自信ないです、演技もできないし、それに……」
「そ、そうだよね……」
(杏果さん、あんなに頼りげない表情で……可哀そうだ)
(うーーーーん)
「わかりました、今日だけ、わたし、やってみます」
「ほんとに?!ありがとう、紗栄子ちゃん」助かったーと杏果が抱き着いてくる。
こうして、紗栄子のAV女優デビューが決まった。