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地味子が官能小説を書いたら
第5章 傷心
---------- 【破】イヤな奴は意外とイイ奴だった④ ----------
準備が整い、紗栄子は撮影現場へと入った。
スタッフの視線が一斉に紗栄子に集中する。
「ひゅ~」スタッフの一人が口笛を吹いた。
「いや~、立花さん、良い子を発掘してきたね~こりゃ、十年に一人の逸材だよ」
ディレクターらしき男が紗栄子に舐め回すような視線を送る。
ぞぞ……と、紗栄子は虫唾が走る思いがした。
「よーし、時間がない、さっそくソファーのシーンを行こうか」
スタッフに促され、紗栄子はソファーに座った。
その横に、海が座ると、紗栄子は少し緊張した。
「おまえ、初めてなんだって?」
「うん、そうだけど」
(なに?『おまえ』って、お前はわたしの彼氏かよ!)
紗栄子に不快な感情がわく。
「周りのスタッフは気にするな、今、ここには俺とおまえしかいない、分かったな」
「う、うん」
「おまえの事が好きだ」
(え、ええええええーーーーーー)このタイミングで告白?!
さっき会ったばかりなのに、超絶美少女の魅力に負けたのか?
どうしよう、杏果さんに悪い、と思う紗栄子。
「おまえは、俺の事をどう思う?」
(そりゃ、さっきまで、イヤな奴って、思ってたけど……)
「わたしのこと好きなんでしょ?」
「じゃあ、わたしも好き」
「OK、始めるぞ、俺にまかせろ」といって、海は紗栄子の手を握ってきた。
「うん、頼りにしてる」
さっきまで、イヤな奴と思っていたけど、案外頼りになるじゃない、紗栄子は緊張が解れていく気がした。
「スタート!」
ディレクターの声が鳴り響き、カメラが回り始めた。
海が紗栄子を見つめる。
瞳の奥が深い。思わず視線を反らす紗栄子に、海は頬をよせ、耳元で囁いた。
「おまえ、俺の事が好きなんだろ、もっと俺の事を見てくれ」
そう言いながら、海は離れ際、紗栄子の首筋に口づけをした。
「はん~」思わず声が漏れる紗栄子。
(なによ、好きって言っても、さっきそうなったんだから、いきなりは無理よ)
紗栄子はムッとしたが、海が紗栄子を見る愛おしそうな瞳を見ると、それに応えなければと考えを改めた。
(なんて目で見るんだろう?)
見つめられるだけで、紗栄子は身体がジンジンしてくる思いがした。