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化け物
第1章 化け物
 結婚式が終わった花嫁を、わたしは思いっきり引っ叩いた。


「お前なんか死んじまえ!」


 わたしが同じセリフをもう一度叫んだとき。
 愛する妻とお腹の子を守るため、新郎がわたしの顔を思いっきり引っ叩いた。
 本当に、優しい人だったのだ。


 衝撃で床の上に転がったわたしは、姉に向かって凝りもせず、何度も同じことを叫んだ。
 顔面から床に着地したせいで鼻血が滴り落ちて、叫ぶたびに飛沫が散った。


「全部お前のせいだ!」


 姉の白い頬は涙でグシャグシャに濡れていた。
 わたしの目は鬼のように赤く血走っていたに違いない。


「わたしの聡を返せ!」


 父親に引きずられながら、姉の姿が見えなくなるまで、わたしは叫び続けた。



 きっと姉の夫の目にわたしは、化け物のように映ったのだろう。
 
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