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化け物
第1章 化け物
 思い返すと。

 わたしは聡とも姉とも違う、平凡な子供だった。
 母親は2人にお熱だったからこれといって期待もされず、かといって放置されることもなく、平凡に成長した。

 聡が事件を起こしたとき、わたしは聡と姉とは違う公立の中高一貫校に通っていた。
 だから二つの事件どちらも、なんだかファインダー越しに覗き込んでいるような現実味のない出来事に感じた。

 それなりに苦労した中学受験だったけれど、転校することにこれといって未練はなかった。
 犯罪者の身内だということも、あまり実感がなかった。



 だから聡がすべてを知ってしまった日…。
 真っ暗い瞳をした聡が深夜にわたしの部屋を訪れたとき、心臓はあるのに生命はそこにないような聡の手に包丁が握られていたのを見ても驚かなかったのだと思う。


 あのとき聡は死ねたら楽になれたはずなのに。
 でも聡は赦されなかった。
 いいや…わたしが赦さなかった。
 わたしが聡を…わたしの心臓を失いたくなかったから、わたしが聡の邪魔をしたから、致命傷を負うことができなかったのだ。
 

 
 新しい土地に越してきて公立中学校に通い、本来ならばせずに済んだはずの高校受験を乗り越え、それなりに平凡に送っていた高校生活を手放すことに、これといった痛みは感じなかった。




 更生教育とは一体、何だったんだろう。




 聡がバールを片手にわたしの通う高校にやって来たときは、つくづく聡が塀の中で過ごした期間の虚しさを実感せざるを得なかった。




 聡は、いつから化け物になったんだろう。
 誰のせいで化け物になったんだろう。
 それとも、生まれつき化け物だったのだろうか。
 聡とトツキトオカ同じ腹を棲家にしていた私の心にも化け物が棲み着いているように。


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