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ハニードロップ
第3章 信じて

 何杯か飲んで、芦屋くんのバーを出た。明日も仕事。明後日も仕事。明明後日も仕事。仕事仕事仕事。

「はー、会いたいな……」

 出会う前は一人で平気だったのに、会いたいな、寂しいな、疲れたからぎゅってしてほしいな、なんて考える。連絡、してみようかな……。
 少し立ち止まって、鞄から携帯を取り出す。画面は真っ暗。やっぱり何も来てないか……。電源ボタンを押す。

「……ん?」

 つかない。充電がないのかな?いつ切れたんだろう。長押ししてみる。あ、ついた。

「……え?」

 電話とメッセージアプリに夥しい数の通知が来ている。私、もしかして電源切ってた……?

『奈子ちゃん、結婚なんて嘘だからね!』
『俺が好きなのは奈子ちゃんだけだから!』
『ちゃんと説明したい』
『奈子ちゃん会いたい』
『俺のこと嫌いになっちゃった……?』
『会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい会いたい』

 どんどん悲痛に、そして不気味になっていくメッセージ。やばい、やばいやばいやばい。慌てて電話をかけようとした時だった。

「北山奈子さん、ですか?」

 スーツ姿の眼鏡をかけた真面目そうな男の人に名前を呼ばれたのだった。
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