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ハニードロップ
第5章 人生のゴール
「ねえ、奈子ちゃん、ちょっと話したいことあるから一緒に座ろ?」
香月さんはとても人懐こい人のようだ。私の腕を引いて自分が座っていた隣の席に導く。
「あのね」
「はい」
「ちょっと前に、三木村くんと私の結婚報道が出たでしょ?」
「はい」
「それで嫌な思いさせたと思って、ずっと謝りたかったの。ごめんなさい」
頭を下げる香月さんに恐縮してしまう。頭を下げ合っていると、「間抜けな光景」と芦屋くんが鼻で笑った。私はまだいいとしても香月ゆきえにはやめろ……!
「あの、博也くんから少し聞いてるし大丈夫です。元々疑ってもなかったし」
「すごい、ラブラブなんだね!私も彼とラブラブだけど」
「そうなんですか……」
香月さんのお相手、とっても聞きたいけれどさすがに聞けない。芸能人のそういうお話って好奇心の的だけど……我慢我慢。
「たまたまね、三木村くんと彼のマンションが一緒だったんだ。三木村くんとはその時映画で共演してたし、話題作りにもなるしって。彼のことはバレるわけにはいかないから」
「へー……」
「あはは、奈子ちゃんやっぱり可愛いねぇ。すっごく聞きたそうな顔してる!」
何故バレる……!香月さんはとっても楽しそうに笑って、私の耳元に顔を寄せた。いい匂いがします……
「あのね、私の彼は……」
「ひっ……!」
香月さんの口から出たのは最後の大物独身俳優としてすっごく有名な人だった。あまりのビッグネームに空いた口が塞がらない。
「え、めちゃくちゃ気になるんだけど。誰?」
芦屋くんの言葉に首を横に振る。聞かない方がいい。顔面蒼白。
「でねでね、今日は奈子ちゃんにお詫びを渡したくて!」
香月さんはとっても綺麗な笑顔で紙袋を差し出した。