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秘蜜のバイト始めました
第1章 え? 聞いてませんが?
電話だけ……話だけ、それなら危険はないし、もしかして美味しいバイトだったらラッキーだ。

私は、たった今投げ捨てた名刺を拾い、番号を入力した。


ツツーー、発信音の後、例の調子良い声がスマホから聞こえてきた。


「お電話ありがとうございます、立花企画代表、立花謙佑でございます」

(げ、何このへんな電話の受け方、宗教か何か?)

このまま電話を切ろうかと思ったが、何とか堪えて応答する。

「あの、わたし、先日渋谷で声をかけていただいたものですが」

「あー、もしかして、ハチ公広場にいた可愛いお嬢ちゃん?」

「あ、多分そうです。あの……バイトでも良いと言われたので、お話だけでも伺おうかと思って電話したのですが……」


「ちょっと待ってね、電話代がかかるから、こちらからかけなおしますすから」

「あ、非通知でかけてるね、悪いけど、一旦切るから、通知にしてワン切りしてくれる?」

電話番号を知られるのは抵抗があったが、住所を知られるわけではない。私は、言われるままワン切りした。


「あ、連絡ありがとうね。バイトしたいんでしょ? 面接だけでもおいでよ。交通費を5000円払うから」



(5000円! これで10日はランチが食べられる)



「本当に面接だけで良いんですか?」逸る気持ちを抑えつつ確認する。

「もちろんですよ、話を聞いて興味がなければ、そのまま帰っていただいても構いません」

「ただ、来ていただく以上、交通費はどんなに近くても5000円払いますよ」


(よっしゃー!)

私は、心の中で小さくバッツポーズを作った。




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