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イキ狂う敏腕社長秘書
第1章 【悪魔の囁き】
婦人が去っていった後。
ホッと胸を撫で下ろす私に同期の女子が
「急に声掛けられて緊張したでしょ?何だったんだろうね?」と話しかけてくれる。
さぁ?と首を傾げるしか出来ない私。
これが、私と社長婦人との初めての接点だった。
2回目に会った時はすでに、私は秘書課へ移動させられた後で。
急遽辞令が下りた私は何の知識もないままの移動となり不安でいっぱいだった。
それから数ヶ月は社長について回り、秘書課の先輩に指導して頂く。
主に業務内容は、社長のスケジュール管理 、その他役員のスケジュール確認、経費支払業務、来客対応(お茶出し)、外出や国内出張の同行……といったところ。
一度頂いた名刺は必ず顔と結びつくようにしっかり頭に叩き込む。
目まぐるしい日々に倒れそうな私を見兼ねた温厚な社長は優しく頭を撫でてくれた。
「忙しくてすまないな……ちゃんと助かっているよ、ありがとう」
笑うと目尻にシワがいく。
白髪交じりの短髪にオシャレ髭。
いつもオーダーメイドのスーツに身を包む小綺麗さ。
背筋もピンとしていて所作も育ちの良さが溢れてる。
良くも悪くもセクシーなのだ。
大きな手のひらで撫でられて私は大粒の涙を流してしまった。
社長の前で泣くなんて秘書失格だ。
全然役に立てていないのに。
足を引っ張ってばかりの私を少しでも認めてくださり胸がいっぱいです。
すみません…と謝ればほんの少し胸を貸して頂いた気がした。
背中に伸びた手が私を抱き寄せる。
「キミは飲み込みが早い方だよ、おまけに丁寧だ……だから最初は忙しくて辛いだろうが辞めないでいて欲しい……それなりの対価は支払うつもりだから」
「はい……頑張ります」
「それと………キミの隣は何故か心地良い」
フッと笑う表情が大人びていて私の心をいとも簡単に掴んだ。
格好良すぎます……そんなふうに言われたらどうすれば良いのかわからなくなる。
「って、こんなオヤジに言われても困るよな」とか笑いに変えてくれるのも大人の優しさ。
「精一杯、秘書を務めさせて頂きます」
こちらも背筋がピンとする。
自分専用の名刺には「社長秘書」と印刷されていた。
それを見て身の引き締まる想いを抱く。