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イキ狂う敏腕社長秘書
第9章 【孤独の先にあるもの】
「いえ、いつも頑張ってらっしゃるの見てたので」
「え…?」
「あ、いや……変な意味ではなくて!えっと……」
「社長についていくのがやっとなので」と自虐的に笑う。
「あ、あの……帰りは電車ですか?」
「はい、地下鉄ですけど」
「僕、○○駅なんで良ければご一緒しても……」
僕って言うんだ。
ヤバい、可愛い……てのは顔に出すことなく。
「私、その2つ前の○○駅で降りますけど」
「えっ……」
お互い顔を見合わせて笑う。
意外と近いですね……と耳まで真っ赤なキミは一緒に歩く帰り道の間で、関谷 湊(セキヤ ソウ)だと名乗ってくれた。
予想していた通り大学生だったけど大学院生で6年通うらしくあと2年残ってるんだって。
22歳か……若い。
しかも医学部で将来は歯科医師になりたい……なる予定だとか。
「へぇ……学費自分で出してるの?凄いね」
「兄弟6人居て裕福じゃないんで……あと此処とは別に塾の講師のアルバイトもしてます」
彼は次男で長男は中学校の教師してるんだとか。
「あ、何か僕ばかり喋っててすみません!ウザいですよね」
「いやいや、そんなことないよ?私の知らない世界を知れて興味津々だよ」
会話は途切れることなく続いた。
沈黙にならない相手は初めてかも知れない。
時折無邪気に笑う彼に少なからず癒やされていた。
私も無理することなく耳を傾け自然と笑う。
フニャッてなったり勝手に赤面したりコロコロ変わる表情は見てて飽きない。
可愛い弟……て感じ。
「私、兄弟とか居ないから多いのは憧れる」
帰宅ラッシュの混み合う電車内で他愛もない話が続く。
次々と乗り込む乗客でほぼ満員状態。
さり気なく壁側に立たせてくれて自分の身体で盾になってくれていた。
顔を上げるとかなり近くてすぐ目を逸らしてしまう。
あれ……今日ってそんな暑いかな?
首筋に汗垂れてる。
ずっと耳まで真っ赤だし手をついて守ってくれてた。
「あ……汗臭くてすみません」
全然臭くない。
むしろ、甘い香り…だよ?
ハンカチを出して首元に当ててあげた。