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イキ狂う敏腕社長秘書
第9章 【孤独の先にあるもの】
「あ、汚れます、大丈夫です、ありがとうございます」
いちいち新鮮だな、この慣れてない感じ。
見つめたら照れてまた汗かいてる。
「暑いね?」
「ん……はい」
全然こっち見ないじゃん。
可愛くて仕方ないんだけど?
母性擽るのやめて。
そろそろ最寄り駅に着いてしまう。
アナウンスが流れてゆっくり電車が停車していく。
「明日は出勤?」
「はい、午後からですけど」
「知ってる……じゃ、また明日、お疲れ様」
扉が開いてホームに降りた。
たくさん降りる人も居て少し離れて見送ろうと振り返ったらすぐ後ろに彼も居て驚いた。
「え……?流されちゃった?人多いもんね」
少しだけさっきとは違う表情に気が付いたけど。
「あ……ねぇ、早く乗らないと出ちゃうよ?」
そう言ったら下向いたまま袖口を掴んできたの。
え……?なに……?
覗き込んで言うしかない。
「どうしたの?人混みに酔っちゃった?」
掴んでる手が若干震えてる。
ボソッと何かを発したので聞き返す。
「まだ、一緒に居たい…です」
ドクン…!と胸が高鳴った。
ストレートな人、嫌いじゃない。
回りくどいより断然良い。
動揺してないフリは自然と身に付いていて簡単に平常心を保っていられる。
「そっか、じゃ………ご飯食べに行く?」
「はい…!」
そんな安心しきった顔見せないで。
手のひらで転がしたくなる。
優しい言葉かけたらコロッといっちゃいそうだね。
私にそんな隙与えたらまた悪い女になっちゃう。
美味しい居酒屋でご飯食べてお酒も飲んで帰る頃にはトロンとした目で甘えてくるの。
お酒弱いんだね、トイレから戻って来た彼は私の隣に座ってきた。
慌ててバックとジャケットを退ける。
「大丈夫…?」
酔った勢いで手を握ってきては距離が近い。
「帰りたくないです……」
「今日は帰りな?タクシー呼んであげるから」
携帯を出すと画面を隠して触らせてはくれない。
そのまま肩に頭を乗せてきた。
甘えたモードなのね。
作戦かしら。
背中を擦ってあげながら肩を貸す。
「関谷くん、住所言える?」