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イキ狂う敏腕社長秘書
第9章 【孤独の先にあるもの】
「それじゃ休まれないだろ?気にせずゆっくりしてくれ」
お辞儀だけを返しデスクに戻ろうとした。
呼び止められて振り返る頃にはもう腕の中だった。
「えっと………社長?」
「少しだけ………チャージさせて」
「誰か来ちゃいますってば……」
「ノックしてくるだろ」
ほんのり甘い香り。
やっぱりこの腕の中は安心する。
「温かいですね」
「美雨……」
顔を上げれば優しい眼差しが降り注ぐ。
「いつもありがとうな、美雨に凄く支えられてるよ、安心して隣で仕事が出来てる………これからも傍に居てくれる?」
そんな風に言葉にされるとどうしても弱腰になる。
張りつめてた糸が千切れそうなるよ。
逃げ方だけは上手くなった。
「それって………私に結婚するなって事ですか?」
「え、いや………えっと」
「良い人が居たら遠慮なく結婚しますからね、私」
絶句して今にも泣き出しそう。
でも私ももうアラサーなので。
いつまでも縛られてる訳にはいかないの。
「その時はちゃんと後任探して引き継ぎしてから身を引きますから安心なさってください」
「美雨……それはダメだ」
「私にだって幸せになる権利ありますよね?まぁ、残念ながら今はそんな相手居ませんけど」
少し曲がっていたネクタイを正してあげた。
そしたら強引にキスをされる………
手放したくないんですよね、私を飼い慣らしているおつもりでしたか?
あんな事があって余計に過敏になっているのかも知れません。
このような思いに達したのもあの件が引き金になったのだとご自身を責めて頂いても結構ですよ?
さっきより強く強く抱き締めてくる。
不安なんですね。
でも社長……引き際って大切だと思いませんか?
「ダメだ………ダメだダメだ…!」
まるで駄々をこねる子供のようです。
でも本当は嬉しい。
もっと取り乱して欲しいとさえ思う。
焦ってる社長を見るのはとても良い気分なので。
「仕事、戻っても良いですか?」
我に返ったのか素直に放してくれたが、すぐに行こうとする手を取り何かを懇願する瞳。
「今夜………家に行っても良いか?」