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イキ狂う敏腕社長秘書
第9章 【孤独の先にあるもの】
離してよ、この手。
「もっと言え」
首を振って拒む。
「解放して欲しいんだろ?だったら俺を傷付けてみろ」
嗚咽で何も言えなくなる。
首振ったって何も伝わらない。
「それが出来ないなら、俺は今すぐ此処からお前を連れ去る」
え………?
力強く手を引かれ社長室を出て行く。
慌てて涙を拭った。
こんな姿、他の社員に見られでもしたら噂されてしまう。
専用エレベーターで降りて自家用車に乗せられた。
勢いよく車庫を出て行く車。
「あの、社長………どちらに?」
「黙ってついて来い」
真剣な横顔は何を言っても無駄な雰囲気を醸し出していた。
「でも、仕事が……」
「全部キャンセルだ」
自ら先方に連絡を入れイヤホンで話してる。
急に外出したりして、しかも私も居ないとなると変に疑われたりしないかな。
今さら言っても仕方ないけど。
30分ほど走って着いたのは見知らぬマンション。
地下駐車場に停めて慣れた様子で入っていく。
「あ、あの……社長?」
「ここは俺が間借りしてる……勿論あいつも知らない」
あいつ……とは明里さんの事だろう。
エレベーターで9階に上がり暗証番号で開錠するタイプのマンション。
部屋に入るとすぐに唇を奪われ抵抗する。
「やだ……っ」
流されてついてきてしまった事に激しく後悔してももう遅い。
社長はきっと、2人きりになりたかったんだろう。
ゆっくり話し合うつもりなのか。
肩を掴まれ念押ししてくる。
「俺は絶対に手放さない」
「嫌です………」
「美雨だって俺の事手放せないはずだ」
真っ直ぐ過ぎる瞳は直視出来ない。
それが返って認めてるようなもの。
「お前が居なくなったら俺……生きていけない……生きてけないよ、美雨」
お願いだからもう嫌いにさせてよ。
これ以上引っ掻き回さないで。
「俺から絶対に離れるな」
やめて…………鈍ってしまう。
譫言のように
「離さない……離さないぞ」って強く抱き締められた。