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イキ狂う敏腕社長秘書
第10章 【溺れていく本能】
レンタカーを借りてめちゃくちゃ張り切ってくれている一ノ瀬さん。
予定していた通り事は進んでる。
2人きりで旅行なんて初めてだね。
私が待ち合わせ場所に現れるまでちょっとまだ疑ってたとか。
温泉久しぶりだよ。
ホテルじゃなくて旅館に泊まるのも嬉しい。
何も口出しせずほとんど任せっきりだったけど本人も楽しそうだし自然と私も楽しませてもらってる。
今日、明日の日程を聞き終えて頭を掻きながら「こんなんで良かったかな」って照れた横顔。
ベージュのセットアップなんてオシャレだね。
インナーは白のTシャツで清潔感もあるし緩すぎないカジュアル。
「どうしよう?私、めっちゃテンション上がってきた」
笑顔で答えるとニカッと白い歯を見せてくる可愛さ。
ほぼ同期なんだけど敬語じゃなくなってからは年下に見えちゃうくらい甘えたな彼。
私は白のミモレ丈ワンピース。
寒いかも知れないからグリーンのミリタリージャケットを肩がけしたコーデ。
動きやすいフラットシューズだから歩き疲れることもナシ。
へぇ、今日は初めてあなたの運転姿を見る。
サングラス掛けるんだ?格好良いよ。
運転も丁寧でポイント高し。
「どうしたの?チラチラ見て」
「格好良いなって思って」
「惚れ直した?」
「それはまだ」
「プハッ!何だよそれ」
終始和やかな雰囲気の車内で、途中パーキングに寄り食事を済ませまた移動する。
久しぶりにこんなのんびりと楽しい時間を過ごしているかも。
全ての誘いはキャンセルした。
勿論、明里さんにも報告してる。
この前の事も包み隠さず伝えた。
話しながらまた泣いちゃって。
優しく抱き締めてくれたの。
不倫の途中経過を不倫相手の奥さんに報告してるって何なの。
頭がこんがらがっちゃって結局泣いて困らせた。
「辛かったね、ごめんね、こんな事させて……思い留まってくれてありがとう……好きで良いんだよ、あの人の事捨てないでくれてありがとう」
もう訳がわからなく明里さんの胸で泣きじゃくった。
ずっと背中を擦ってくれていていつの間にか落ち着きを戻していたの。
明里さんは本当に不思議な人だ。