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イキ狂う敏腕社長秘書
第10章 【溺れていく本能】
「私だって出来る事ならしがらみ全部排除したいよ……美雨があの人を支えてるのは紛れもない事実なんだから」
離婚に踏み切るのはかなり難しそうだ。
会社の運命を握っているのは明里さんなんだそう。
「今どき政略結婚なんてね」と自虐的に笑う横顔はどことなく寂しげだった。
明里さんのご両親が黙ってないみたい。
業務提携といっても大半を占めているから。
撤退となると今の会社は空中分解だ。
そうならないように明里さんも色々と足元を固めているって前にチラッと話してくれていた。
ただSMの女王をしてる訳ではないのだ。
だから芯が強いし周りに流されない、私と全く真逆の人間。
「ちっとも格好良くなんかないよ、夜の相手なんて出来ないから始めは放ったらかしてたけど浮気してるの知ってかなりプライド傷付いてね、隠れてされるより目の届くところでさせた方が良いって自分の事しか考えてない」
だからって私を…?
選んだ基準は私の目だったって言ってた。
一目見た時に、私なら純情ぶってても一皮剥ければ必ず豹変するって見抜いたと。
私、ただ社長夫人にビビってただけだけど!?
ビビってたのも含めて目の奥に隠された人格を感じたんだとか。
明里さんの分析はあながち間違ってはない。
自分でもびっくりしてる。
こんなビッチだった事、セックスに溺れてる自分に。
「たくさん経験しなさい、その中で本当の自分を見極めていくの」
出来るかな……私に。
流されてばっかなんだけど。
自信ない………1ミリも。
「女が良ければいつでも相手するわよ?」なんて触れるだけのキスをしてくる。
照れて顔見れない。
「マコとは最近会ってるの?」
そう聞かれてどうリアクションすれば良いのかわからずに居た。
何もかも包み隠さず報告しているけどマコさんとの関係は全て伝えていない。
様子を見て話そうとの事だったから。
「会えてないです」
これは事実だ。
最後に会ったのは1ヶ月以上前。
連絡は時々。
でも全部私から。
マコさんから来ることはない。
結婚しよう……とまで約束した仲なのに。
社長の事で頭いっぱいだった時期だから遠慮してくれてたのかな。
なんて、都合良く考えてしまう。