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第2章 【緊縛の底知れぬ快感】

やった後すぐにそう出てくるのは本当ズルい……甘え上手な人なんですね。
社長のキスマーク……無理やりとはいえむちゃくちゃ嬉しい。
いつかは消えちゃうけど……




「消えたらまたつけるから」




真っ直ぐ見据える瞳にまた射抜かれる。
どうして欲しい言葉を簡単にくれちゃうんですか…？
独占欲強いだなんて……願ったり叶ったりです。




でも天の邪鬼な私は……困ってみせる。




「じゃ、消えていないうちは抱かないでください」




「えっ？」




「指一本触れないで……」




かなり勝負に出たが、そんなこと通るはずがないこともよく知っている。
ほんの一瞬、社長の口角が上がった気がした。




身体ごとそっと体当たりしてきて呆気なく壁側にまた追いやられる。
ふらついて壁に背をついた。
顔が近付いてくる…！
目をギュッと瞑ったけどクスッと笑われただけでキスはされなかった。




「いいね、それ……余計燃えるよ」




「え…？」




耳元で甘く囁く声に再び身体は疼き出す。




「指一本触れないで抱いてやるよ」




自信に満ちた表情。
これ以上居たら危険だ。
「失礼します」と足早に社長室を去る。




「あら、どうしたの？熱でもある？」




他の役員秘書の先輩から指摘され、顔が真っ赤なことに気が付いた。
誤魔化したが「薬飲んできます」と給湯室へ逃げる。




その後の職務は問題なくやり過ごせたが時々見つめる視線が熱くて知らないフリするのにひと苦労だった。




完全に面白がっている。
惑わされちゃダメ。
私はミスしなければ良いだけ。
退社時間になると内線で
「まだ仕事が残っているから先に帰って良いよ」と言われた。




また呼び出されるのかと思ってヒヤヒヤしたが違ったようだ。
有り難く素直に受け入れる。




＿＿それともまだ俺に何かされたい？




受話器越しにクスクス笑ってる。




「いえ、結構です。お先に失礼します、お疲れさまでした」




勢いよく内線を切ってしまったけど、顔も見ずに退社しても良いのだろうか？
出張行ってると思えば良いよね。
他の秘書も退社していってる訳だし。