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イキ狂う敏腕社長秘書
第13章 【狂愛、略奪】
「おはようございます」
午後から出勤したら元気に挨拶してくれる警備員さん。
私が今出勤したってわかるんですね。
会釈して行こうとしたが脚が止まる。
「あの、いつもの人は……お休みですか?」
こんな事、入社して初めて声を掛けたかも知れない。
いつもの人…というのは勿論、関谷湊くんの事。
私に話しかけられ一瞬たじろいだものの、すぐに察してくれて笑顔で教えてくれたのは私が入社する前から働いているであろう50代のベテラン社員だ。
「あ、彼……ちょっと風邪ひいたみたいで、ここ2、3日休んでますね」
2、3日って結構ひどいんじゃ…?
夏風邪って治りにくいですからね〜と呑気に言ってる。
お礼を言って急いで出社した。
連絡など来ていない……当たり前か。
付き合ってる訳でもないし、私からは連絡した事もない。
気を遣っているのか、本当にヤバい状況なんじゃないか。
電話かけるにしても会社だとマズいし時間もない。
簡単に引き継ぎをして業務にあたる。
社長の顔も見て挨拶も済ませた。
遅れた分取り返さなきゃ…とバタバタと時間だけが過ぎていった。
「あまり根詰めるなよ、キリが悪くても今日は定時で帰れ」
わざわざデスクにまで来て優しい声を掛けてくれる。
有り難いけど、あまり早く家に帰りたくない。
残業を覚悟していたが取り上げられてしまった。
「目を離すとすぐ無理するからな、真田さんは」
「すみません……では、お言葉に甘えて帰らせて頂きます」
「うん、明日また」
ちゃんと“待ってるよ”と目で合図してくれる社長に泣くのを我慢して退社した。
昼間会った人とはまた別の人が警備に当たっていた。
本当なら湊くんがそこに立っていたはずなのに、そうじゃないだけで景色が違って見える。
トボトボと駅まで歩く帰り道。
左側の車道からクラクションが鳴り、私を呼ぶ声。
視線を向けた途端、脚が竦んだ。
今にも泣き出しそうなのは私の方なのにどうしてマコさんがそんな顔してるの…?
車から降りてすぐ駆け足で寄って来る。