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夏の終わりに
第15章 欲求
どれだけそうやってうずくまっていただろうか。やがて千里は重く溜め息をつくと、のろのろと立ちあがった。

たこ焼き器、取りに行こう……。

浩人に愛撫された快感がまだ体中に残っていて、心が激しく波打ち、もどかしく疼いている。
このままではキッチンに戻れない。今、浩人に会ったら、絶対に冷静な判断が出来なくなる。続きを懇願して、もっととんでもない言葉まで言ってしまいそうで、千里は怖かった。

心を鎮めるための時間が欲しかった。


けれど―――、


切なく鳴く体を抱きしめて、千里は思う。

愛しているからこそ、浩人が欲しい。浩人の苦しみを受け止めたい。癒したい。
それは純粋な本能で、隠す必要なんてあるのだろうか。


振り返ると、キッチンの窓から溢れる灯りが視界を占めた。
馴れた道とは言え暗闇を歩く不安も芽生えて、千里は踵を返す。
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