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夏の終わりに
第16章 危機
戻ろうと決めた途端、浩人から逃げてしまったことが、暗然とした浩人を一人にさせていることが、千里は堪えられなくなった。
早く浩人に会いたくて、乾いた地面を蹴る。

けれど、次の瞬間には立ち止ってしまった。

「ちっさとぉちゃ~ん♪」

行く手を、数人の男が立ちはだかるように塞いでいた。その先頭でテッペーがへらへらと笑っている。

「急いで、どっこいくのぉ?」

ねっとりとした不快な声が耳に張りつく。
千里は奈落の底へ落ちたような心細さと不安に襲われて、ゆっくりと後ずさった。

「怖がらないでよ。傷つくなあ」

テッペーの隣にいる男がそう言って、にっと笑ってみせた。
ゆっくりと男達が近づいてくる。

怖い。

その言葉だけが頭の中を占めて、恐怖が喉に張りついて声が出ない。

ヒロ…兄ちゃん……

千里はキッチンから漏れる灯りへと視線を泳がせた。
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