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夏の終わりに
第17章 咆哮
不意に辺りが暗闇に包まれた。
浩人の胸に顔を埋めている千里はそのことに気づかない。


しばらくして気持ちが治まってくると、千里は浩人の胸から顔を離そうとした。
その動きに反応するかのように、浩人の腕がさらに強く巻きついてきて、千里は息苦しさから呻き声を漏らす。


狂ったように吼えながら男達を殴っていた浩人を思い出す。

ずっと、浩人のことを穏やかな優しい人だと思ってきた。
四年前のあの日、そうではない一面を知り、戸惑い、怖くなって、
再会してからは浩人の中に潜む怯えに気づいて、それを四年前のあの日が原因なのだと、千里はそう思うようになっていた。


けれど、もしかしたら違うのかもしれない。


自分を抱きしめる浩人は小刻みに震え、泣いているようだった。
千里は浩人の背中に回す手に力をこめる。

そのまま二人で互いを守るように抱きしめ合い、ただ静かに畑の中にうずくまっていた。
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