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夏の終わりに
第18章 安息 ①
カズは眉を上げたが、暗闇の中で見せた反応に浩人は気づかない。
「そっか。んじゃ、ジジババが勘付く前にずらかるぞ」
そう言ってカズは、返事を待たずに踵を返した。
北森家の中に入っていく後ろ姿を見送ってから、浩人は腕の中でうずくまっている千里を覗き込む。もぞりと動いて顔を上げた千里は、浩人と目が合うと小さく口許を綻ばせた。
「俺達も帰ろうか」
千里が頷く。
浩人は千里を抱きしめ直しながら、肩の力を抜き、あからさまに大きく息を吐き出した。
―――一緒に家に帰る
それを当たり前のように受け止めて同意してくれたことに、激しい喜びが湧きあがる。
心の中に広がる安堵の色に、浩人は戸惑い、目頭を熱くさせた。
「……ヒロ兄ちゃん?」
胸の辺りで、千里のくぐもった声がする。
千里は、ここにいる。
まだ、ここにいてくれる。
「そっか。んじゃ、ジジババが勘付く前にずらかるぞ」
そう言ってカズは、返事を待たずに踵を返した。
北森家の中に入っていく後ろ姿を見送ってから、浩人は腕の中でうずくまっている千里を覗き込む。もぞりと動いて顔を上げた千里は、浩人と目が合うと小さく口許を綻ばせた。
「俺達も帰ろうか」
千里が頷く。
浩人は千里を抱きしめ直しながら、肩の力を抜き、あからさまに大きく息を吐き出した。
―――一緒に家に帰る
それを当たり前のように受け止めて同意してくれたことに、激しい喜びが湧きあがる。
心の中に広がる安堵の色に、浩人は戸惑い、目頭を熱くさせた。
「……ヒロ兄ちゃん?」
胸の辺りで、千里のくぐもった声がする。
千里は、ここにいる。
まだ、ここにいてくれる。