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夏の終わりに
第18章 安息 ①
ゆるゆると持ち上げた手が震えていた。千里はその手を掴んで、浩人が触れようとしていた頬を預ける。

柔軟に手に張りつく肌に心揺さぶられ、それでも浩人は先に進むことが出来ない。声を出すことも出来ずに、ただ静かに首を振る。

「あの人達に触られたところが気持ち悪いの。だから、……お願い」

浩人ははっと息を飲み込んで、自分の手を掴んでいる千里の手を、その下にある歪んだ痕を見つめた。

連中に対する怒りは、今もなお浩人の中でたぎり続けている。
千里が欲しい。その想いも薄れたわけではなく、むしろ制御出来ないところまで達している。

今、千里を抱けば、新しい痣が出来るだけでは済まされない。千里が痛がっても、今度は止まらない。
きっと―――、

「……ちぃを壊してしまう」

「触ってくれないほうが、…壊れちゃうよ。全部忘れるくらい、ヒロ兄ちゃんでいっぱいにして?」
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