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夏の終わりに
第2章 帰郷
クモの巣をかぶった券売機が置いてあるだけの駅舎に降りてみると、あるはずの迎えが見当たらなかった。

川辺千里はジリジリと照りつける太陽から隠れるように駅舎の軒下に戻り、ため息をもらした。
母親の千穂に電話をかけても、返ってくるのは虚しいコールばかり。

来ている途中なのかな?
遅れているだけで。

待つしかない、かぁ……。

カバンを持ち直して、券売機横のベンチへと移動する。

ところが空気のこもったその場所は、恐ろしいほどの熱気が立ち込めていた。
傍らにぽつねんと置かれた扇風機を動かしてみると、熱風が顔に当たってどっと汗が噴き出る。

「だ、だめだ……」

千里は逃げるように涼しい場所を探してさ迷い、結局、先ほどまでいた軒下で落ち着いた。
暑いことに変わりはないけれど、時々思い出したように風が吹いてくれるから少しはマシだった。
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