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夏の終わりに
第5章 約束
浩人はその場に立ち尽くしていたが、しばらくすると千里を起こさないようにそっと近づいていった。

暗闇の中で同じように近づいた時は欲望と罪悪感に苛まれていたが、今は“愛しい”以外に相応しい言葉が見つからない。
千里を見ているだけで心が切なく鳴いて、全てが暖かく、満たされていく。


ソファの後ろへ回ると、浩人は千里の髪をそっと撫でてから、大きな手で頬を包み込んだ。
その手に反応した千里が浩人を見るように顔の傾きを正し、長い睫毛を震わせる。ゆっくりと瞼が開き、褐色の瞳が浩人を見つめた。
浩人は静かに微笑んで、逆さから千里の額に唇を寄せた。
千里はうっとりと顔を綻ばせる。

「おはよう」

そう言って微笑む浩人に、千里は微笑み返して目を閉じる。


「おは…よ、う……?」

言いながら千里は徐々に覚醒していき、驚きを隠せないまま浩人を見つめた。
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