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夏の終わりに
第5章 約束
なんとか気持ちを落ち着けて、今度こそ店内に入ろうと千里を促す。千里は素直に頷いて、幼い頃のように浩人の袖を掴んだ。


「あれ?……ちっさとちゃぁん」

ベッタリと神経に貼りつくような声がして、二人は同時に振り返った。袖を握る千里の手に力が籠り、浩人は千里を背中に隠すように前へ出る。

「何それ。俺、悪者みたい」

男がヘラヘラ笑うと、彼の友人達が同じように笑って男をからかった。
好意的に見ようとしても、柄の良い連中とは言えない。千里が怯えていることも堪え難く、浩人は警戒心に体を強張らせる。

「……へー、メンクイなんだ。だから俺はダメだったのか。傷つくなあ」

「用件は?」

男は不思議なものでも見るように浩人をまじまじと見つめ、次第に不機嫌そうに歪んでいく顔を隠すことなく歩み寄ってきた。
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