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夏の終わりに
第6章 守護
「なんで?」

尋ねる声はあまりにも固く、目を見開く千里の顔に動揺が浮かぶ。浩人は心弱い自分が惨めになった。

「……昨日、あまり話しが出来なかったから」

「大丈夫。後でいくらでも話せるよ」

優しく返せば、千里はほっとしたように頷く。
浩人は胸を撫で下ろした。


……傍を離れるべきなのだろう。
このままでは、ちぃを襲ってしまう。


しかしもう、浩人にはその正しい選択が出来そうになかった。
千里が傍にいる幸せを思い出し、その柔らかさに触れ、信頼と思慕を寄せられる悦びに満たされている今、再び千里のいない生活に戻るなど恐怖に近い。
例えどんなに脆く儚い時間だとしても、許される限り傍にいたかった。

だからせめて、千里の憂いを払い、彼女の平穏を侵蝕するものから守ってみせようと固く誓う。
それは贖罪であり、純粋な本能だった。
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