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夏の終わりに
第6章 守護
自分にはもう千里に愛情を伝える資格がないのだと、浩人は思う。


……愛情?


浩人は自分を蔑むように失笑する。

千里が産まれた時からずっと、慈しみ、大切に守ってきた。それを“愛情”と呼ぶのなら、あの日、その全てを放棄したではないか。
千里の心を無視して……それでも愛情は残っていると思っていたのだろうか。

出張で二・三日帰れないと連絡してきた康人に心の中で感謝を述べ、これで今夜は千里が目を覚まして叫んだとしても大丈夫などと考えて、何故愛情があると思えるのだろう。

「康人おじちゃん、遅くなるって?」

洗い物を済ませた千里がビールとグラスを持ってリビングに入ってきた。浩人は平静を装って振り返る。

「しばらく帰れないって」

「……残念」

康人の不在を千里が喜んでいないことに、浩人の心は酷くざらついた。
その資格もないのに。
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