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夏の終わりに
第7章 愛撫
千里には予感があった。
とても不確かで、頼りのないものではあるけれど。
それでも、昨夜よりも少しだけ大きく開けた引き戸の向こうを眺める。


康人は帰ってこない。
今夜は、二人きり。

だから、きっと―――


切実な期待にすがりついて、浩人を想う。

昨夜、頬を撫で、髪に触れ、静やかなキスをしてくれたように
車内で手を繋ぎ、抱きしめてくれたように
もう一度触れて欲しかった。


テッペーに会った恐怖に今も心はざわめいている。だからこそ浩人の暖かさを感じて安心したかった。


車内で慰めてくれた後の浩人は、不自然に視線を逸らし、千里と接触しないように慎重に振る舞うようになった。
話しをすれば笑いかけてくれる。優しい言葉もかけてくれる。
だから元に戻ってしまった訳ではないけれど、時々見せる険しい顔は変わらなくて、苦しかった。
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