この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
夏の終わりに
第7章 愛撫
千里には予感があった。
とても不確かで、頼りのないものではあるけれど。
それでも、昨夜よりも少しだけ大きく開けた引き戸の向こうを眺める。
康人は帰ってこない。
今夜は、二人きり。
だから、きっと―――
切実な期待にすがりついて、浩人を想う。
昨夜、頬を撫で、髪に触れ、静やかなキスをしてくれたように
車内で手を繋ぎ、抱きしめてくれたように
もう一度触れて欲しかった。
テッペーに会った恐怖に今も心はざわめいている。だからこそ浩人の暖かさを感じて安心したかった。
車内で慰めてくれた後の浩人は、不自然に視線を逸らし、千里と接触しないように慎重に振る舞うようになった。
話しをすれば笑いかけてくれる。優しい言葉もかけてくれる。
だから元に戻ってしまった訳ではないけれど、時々見せる険しい顔は変わらなくて、苦しかった。
とても不確かで、頼りのないものではあるけれど。
それでも、昨夜よりも少しだけ大きく開けた引き戸の向こうを眺める。
康人は帰ってこない。
今夜は、二人きり。
だから、きっと―――
切実な期待にすがりついて、浩人を想う。
昨夜、頬を撫で、髪に触れ、静やかなキスをしてくれたように
車内で手を繋ぎ、抱きしめてくれたように
もう一度触れて欲しかった。
テッペーに会った恐怖に今も心はざわめいている。だからこそ浩人の暖かさを感じて安心したかった。
車内で慰めてくれた後の浩人は、不自然に視線を逸らし、千里と接触しないように慎重に振る舞うようになった。
話しをすれば笑いかけてくれる。優しい言葉もかけてくれる。
だから元に戻ってしまった訳ではないけれど、時々見せる険しい顔は変わらなくて、苦しかった。