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夏の終わりに
第9章 白紙 ②
お願い、
そうしようって言って

最初からやり直そうって言って


浩人を見つめながら、千里は祈っていた。


お願い、言って!


―――ちぃ、

語尾をほんの少し上げて優しく呼ぶ声が千里は好きだった。呼ばれるたびに嬉しくなって、振り向けば浩人の笑顔があって、それだけで幸せだった。

戻りたかった。

浩人に恋人が出来て二人でいる時間が減ってしまったように、浩人が大学に進学して村を出ていったように、
ずっと変わらない関係でいるのは不可能だけれど、浩人への想いが通じることはないのかもしれないけれど、
それでも、戻りたかった。

「ちぃ……、」

恐れるように紡ぎ出される声を、苦しげに眉をしかめるその表情を、もう見たくなかった。


お願いっ


何かを言おうと開かれる口を、千里は祈りをこめて見つめた。
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