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夏の終わりに
第10章 休息
壊れ物に触れるようにそっと千里の肩に手を乗せて、僅かに揺らしてみる。

千里は起きない。

浩人はおずおずと隣に腰を下ろした。浩人の体重でソファが沈み、千里の体が傾く。それを体で受け止めながら、膝枕になるように持っていった。

基本、無防備…なんだよな。

体勢を変えられてもまだ眠り続ける千里に苦笑いし、彼女の頬にかかった髪を優しく払う。そのまま手の甲で頬を撫で、髪を撫で、その先を一房掴んで口に押しあてた。

「……襲うよ」

口にしてみるが、実行に移すつもりはなかった。
微かに赤く腫れている瞼が、その気持ちを押し止めている。

「俺のせい、だよな」

また泣いたのだ。
今朝も泣いていた。

泣かせているのは、自分。
その自覚はある。

「ごめんな…」


幸せそうに微笑む。その顔が好きなのに

泣かせてばっかで、……情けない。
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