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想い想われ歪なカタチ
第8章 8
「起きろ。
 こら、起きろ、伊吹」

「・・・・んっ」

物静かな低い声と一緒に
頬を撫でるように叩く手で、私は眼を覚ました。
目の前には流牙が居た。

その端正な顔に柔和な笑みを浮かべている。
先ほどまでは降り注ぐ太陽の光であんなに明るかった室内は、今はもう薄暗くなりかけている。

「んん・・ 今何時・・・・・――・っ?」

眠い目をこすろうとして動かした手が、自分の思い通りに動かないことに違和感を覚える。
ふいと私は首を回して上を見る。
頭上に持ち上げられた私の両手は、手首のところでがっちりと縛り上げられ、
今、寝ていたキングサイズのベッドの枠に丁寧にくくりつけられていた。
厳しい拘束感の割には、手首を動かしても痛みが無いことから、
ある程度柔らかく伸縮性のある紐をつかっているらしい。
だからと言っても始末が悪く、精一杯ひっぱったり捩ったりしても
一向に両手の拘束が解るところか緩まる気配さえ無い。

「ちょっ・・ これ、流牙!!どういうことよ?!」

ベッドに仰向けになって、頭上で両手を拘束され慌てふためく私の有様を見て
流牙はまた、これ以上に無くにっこりと微笑むのだった。
そうだ、この悪魔が本当に幸福そうに微笑むのは、決まってこういう時なのだ。
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