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想い想われ歪なカタチ
第8章 8
「おいおい、そんなに俺を誘惑したいのか?」

苦笑交じりに微笑む流牙を構う余裕は私には無く、
立てた膝を倒して、その部分が見えないように注意して閉じ合わせる。
流牙は面白そうなものを見る目で、自由に動けなくなっている私の身体を
頭のてっぺん、その上の縛られた両手から、足のつま先まで、
舐めるようにじろじろと見回した。

「いいね。その服、似合ってる。かわいいよ、伊吹」

「そんなのどうでもいいから!この手の外しなさいっ!」

真っ赤になって喚く私の言葉を、全く意に介さない様子で
私をしげしげと眺めては、にっこりと微笑むのだった。

「俺の部屋を掃除しろって言い付けを守らない挙句、
 ご主人様のベッドで居眠りとはどういうことかなーぁ」

その笑顔をみて、私の背中にはひやりと冷たいものが流れ落ちる感覚がした。
流牙の深みのある声はまだすらすらと続く。

「まー、伊吹が節操も無く俺のベッドで居眠りしてくれたお陰で
 ずいぶん面倒な手間が省けたけど、
 ご主人様の言い付けを守らないようなメイドにはたっぷりと
 お仕置きをしてやらなくちゃなー」

私の足下側に立っていた流牙は、軽やかな足つきで私の右側に回ると
ふわんとベッドに腰掛け、私の顔に手をやった。

「ちょ・・お仕置きって!やめてよ、早くこの紐ほどいてよ、流牙・ふにゃぁ」

私の顔にあてがわれた流牙の指が、私のほっぺたを軽く抓ったので
語尾があいまいになって、変な声になってしまった。
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