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想い想われ歪なカタチ
第3章 3
「あ・主って、まさか・・・あんたとかいうんじゃ・」


「当然。俺がこの屋敷を買い取ったんだぜ?

 今日から、俺が! ここの主だ」


フン と胸を張るように、自信を含んだ笑みを美麗な唇に浮かばせて、
流牙は昂然と言い放った。


「つまり、ただのメイドに成り下がったおまえは、
 今日からは俺に! 仕えるんだ。返事は?」


「・・・・・・」



パパの会社が倒産した ってのは、そりゃショックだ。
パパが私を見捨てて何処かへ行っちゃったってのも、すっごくショック。

でも、でも、それよりも、それよりも


               目の前のこの男は誰????


姿形は間違いなく流牙。
少し掠れ気味のバリトンな声も確かに流牙のもの。

でもこの、私を見下して馬鹿にしたような笑いに
腹が立つどころか、いっそ呆れるほどの横柄な態度の、
勝手に私の名前を呼び捨てするこいつは誰?


流牙なんかじゃない。
私の知っている流牙は
感情の端っこも顔に出さない徹底した無表情な男で、
返事の受け答えぐらいしか声を発しない恐ろしく寡黙で、
何よりも、私の命令には絶対服従で、逆らうことどこか、意見することも無いヤツだったわ!


あまりの流牙の変貌振りに面食らって、上手く言葉を操れないでいる私に
流牙はやれやれと言った表情で見下す。


「返事が聞こえないぞ。どうした?」


「・・・・・・ぃ」


「もっとハキハキと喋れ。ほら、もう一度」


私は白いエプロンをぎゅっと握り締めたまま、俯いて床を見つめる。


「・・・はい、

 分かりました・・・・・」
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