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想い想われ歪なカタチ
第4章 4
「いい? あんたは今日から私のドレイなんだからね!」


・・・確かそれが、私が流牙に発した第一声・・・。

流牙と初めて出会った時のことはよく覚えている。
私は六歳、流牙は十二歳。


私のお祖父さまは
長屋番付で必ず上位を占めているような資産家で、同時に人格者であるということも有名だった。
身寄りのない子供や、親が何らかの理由で親権を放棄した子供を引き取って育てる施設に、毎年、多額の寄付をしていた。
私には、エンもユカリもナイその施設に
訪れることになったのは、お祖父さまに連れられてだった。


陽に褪せて、大きいけど古びた木造の平屋の建物。
戦前の小学校はこーでしたってカンジ。
園の遊具はあちこち錆びついて、触るとガサガサしていた。

貧しい運営を強いられている施設には、途方もなく有難い巨額のお金を落としてくれる金づるの訪問に、
満面の笑みを見せる施設長と職員と、あらかじめ練習を繰り返した歓迎一色の出迎えをする子供たち。

そんな中、
私たちには微塵の興味も払わず、
自分の周りにだけ薄くバリヤーでも張ったような雰囲気をまとって、目線を窓の外に向けている流牙の姿は、
ひどく私の目を引いた。

不揃いに切られた髪の毛は柔らかそうで、開かれた窓から吹く風に時折 揺らいでいた。
成長した細身の身体には窮屈な、合わないサイズの古びた衣服を着込んで
広い窓枠に行儀悪く腰掛けて、それでも不思議と綺麗な仕草で、
すらりと伸びた脚を 床に垂らして、片足は膝を立てて、
背筋は窓の桟に持たれて、眩しそうに陽春の光を浴びている。

どうしてそう思ったかは分からないけど、
私は瞬間的に 欲求の塊で一杯になってしまった。

そこに居た存在を、自分の傍に置きたくて、
自分のものにしたくてたまらなくて、
気が付いたらお祖父さまの服の裾をひっぱって、目に映る少年を指差していた。

とびっきりの声を振り絞って叫んで、お祖父さまを見上げて、ぴょんぴょんと飛び跳ねて言った。
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