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想い想われ歪なカタチ
第4章 4
あれは確か、私の誕生日の当日。
パパが昼から会社を休んで、久しぶりに私とお出掛けしてくれる予定だった。
誕生日のプレゼントの可愛い赤い靴は
朝起きたとき、すでに包装紙とリボンに包まれた箱の中にあって、
私はすぐさまリボンを解くと、家の中かまわずそれを履いて、
ウキウキでパパがくるのを待ってた。
でも、パパは約束の時間が過ぎてもなかなか来なかった。
代わりに来たのは電話一本で、
どうしても外せない用事が入ったから、出掛けるのは次にしようと言うセリフだった。

もちろん、私の機嫌は最悪に悪くなって、
周りの使用人(主に流牙)にやたらめったら当たり散らしていたのだ。

そんな時、たぶん私のせいだったと思うんだけど、
流牙がカップに注ぐ途中の紅茶を、ぱたぱたと床に零してしまったのだった。

流牙のすばやい反射神経で、零れた紅茶は最小限で、
でも、フローリングの床を打った飛沫が跳ねて、私の靴にもついて。

私はもちろん、真っ赤になって怒鳴りちらした。


「流牙―――
 なんてことしてくれるの!! せっかくパパが新しく買ってくれた靴に!!」


「・・・失礼致しました」


流牙は機敏な対応で、他の使用人に処理させようとしたのだけれど。


「待ちなさい。
 あんたが汚したんだから。あんたが綺麗にしなさいよね。

 早く床を拭きなさいよ! このままじゃ余計に靴が汚れるから動けないじゃないの!」


流牙は無言で、胸元から自分のハンカチらしき白い布を取り出して、
床に数滴したたった液体をふき取って。


「はやく靴も綺麗にしなさい!! シミになっちゃうじゃないの!!」


ぴかぴかのエナメルの靴だから、これくらいでシミになるわけがないんだけど、
私はイライラしながらそう叫んで

流牙は指示どおり、私の靴を拭こうとする。
その時、私の頭に悪魔的な思考が走る。

流牙の手が私の足に触れようとする前に、
私は すいと自分の足を引いた。


「・・・違うわよ。流牙?
 床と同じように私の靴を拭くって言うの?


 舐めなさいよ、流牙。舐めて綺麗にするの」
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