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想い想われ歪なカタチ
第4章 4
一瞬、何が起こったか、自分でもよく分からなかった。

増していく高揚感に、さすがにこのままではヤバいと慌てて、ただ 足を引っ込めたつもりが
思いっきり流牙の顔を蹴っ飛ばす結果になってしまってた・・・

自分の足に、何かが砕けた鈍い衝撃。
流牙は顔を床にそむけた。

掛けてた眼鏡の 右のガラスがギザギザに割れて、
その破片の所為か 流牙の頬にさっくりと斜めの傷が入って・・・


「あっ・・・!  ・・ごめ・なさ・・――ッっ・」


私は小さく叫んで口を手でふさぐ。

傷をつけてしまったのを見て 動揺する私と正反対に、その本人は何事もないような涼しい顔で、
床に落ちた眼鏡を拾って胸の内ポケットの中にしまう。
いつもと違う点があるとすれば、今付けられた頬の傷口から、赤い血が滲み出てきているだけ。
流牙の唇はもう、堅く閉じたままだった。

なんの変哲もない流牙の様子につられて、
私も口から出かけてた、今まで決して口にしたことのない謝罪の言葉を飲み込んだ。
胸を反らして虚勢を張って、いつも通りの高慢な態度をつくる。


「・・いいわ、もう許してあげるわよ。
 こ、今度から気をつけるのね!!」


でも、声は震えて 少しだけ口篭もってた。


「はい。お嬢様」


流牙は表情の無い顔と声でそう答えた。




・・・・・・・
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