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想い想われ歪なカタチ
第4章 4
まだ、呆然とした空気が私の身を包んでる。

私は、今はもう懐かしい記憶の あの誕生日の出来事の続きを思い出していた。


・・・・・・


わざとではないにしろ、流牙の顔を蹴り上げて、怪我をさせてしまったその日の夜。
何だか胸がもやもやして、どーしても眠れなくって、
眠ってる流牙を無理やり叩き起こして、私の部屋に呼びつけた。

流牙は少し瞼を重そうにしながら、すでに新しい眼鏡をちゃんと掛けていて
いつもの静かで感情のない口調で私に言った。


「何か御用ですか?お嬢様」


・・・流牙は 私が何をしても私に何をされても、いっつも無表情。
これじゃあほんとに、なに考えてんだかわかんなかった。
怒ってるのか 悲しんでるのか 嫌なのか良いのかも。

だから、なんだかそれだけで頭にきてしまって


「・・・何か御用ですか―どころじゃないわよ!
 さっきから眠れないのよ!
 私が眠れないのに、あんた勝手に寝てんじゃないわよ!!」


流牙は無言で、足音もなく柔らかな絨毯の上を歩いて、私のベッドの横の椅子に腰掛けた。
眼鏡の奥の瞳は何も語りかけてくれない。


「・・・何、ぼさっとしてるのよ。
 ほら! 手を握って頂戴」


私の無愛想な使用人は 何も答えないけど、ちゃんと手をとってくれる。
流牙の手のひらはおっきくて温かい。
その温もりを感じると、なんだかすっごく気持ちが安らいできて、私は静かに目を閉じた。

不思議だね。こうして手をつないで目を閉じると、
目を開けたときよりずっと確かに、流牙がすぐ傍に居るって感じられる。
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