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誘蛾灯
第3章 寄るな危険
 美世子の米噛みに青筋が浮かぶ。美女は怒っても美しいというのは嘘だな。地が整ってるだけに醜さが際立ち怖いだけだ。
 「桜ノ宮の阪口初巳様よ!」
 フルネームを聞いて合点がいった。なんだ、露出狂の初巳の事か。それならそうと最初から言えよ。阪口「様」なんて言うから何処のお姫様かと思った。
 お姫様。ある意味それは正しいかもしれない。初巳が通う学校は正式には私立桜ノ宮学園高等部となる。幼稚舎から大学院まである県下有数の名門校だ。才色兼備、文武両道の学園にあって初巳は陸上長距離走の選手として全国クラスの逸材、有名人だ。学園外にもファンが多い。美世子もその一人なんだろう。そんな熱狂的なファンの君に良いことを教えてやろう。
 初巳が長距離走をやっているのは「セルフ露出プレイ」なのだ。競技中身に着けている物と言えばスパイク、靴下、ゼッケンの他はチューブブラにパンティと言っても通用しそうな際どいセパレートユニフォームだけ。普通ならそれなりの下着を着けているのだろうが初巳はノーブラノーパンだ。マラソンで沿道を埋め尽くす観客の前を胸を揺らして走ると何とも言えない快感なんだそうだ。強くなった理由も大きな大会に出て上位になれば長い時間テレビに映り不特定多数に半裸を見てもらえるから。夜な夜な男達が録画を観ながら太股や股間に胸を思ってマスを掻いてると想像すると走りながら軽く逝きそうになるそうだ。
 「答えなさい!どういう関係なの?」
 煩いな。
 「恋人だよ。」
 美世子は酸欠の金魚みたいに口をパクパクさせるが驚きの余り声が出ない。面白い。少し追い討ちかけてやるか。
 「公園で座ってたら寄って来て『お付き合いしてくれ』ってせがむから仕方なく付き合ってやってんだよ。」
 うん、大筋間違ってはいない。言ってない事が多いだけで嘘は言ってない。
 「気が済んだら散ってくれないか。矢部美世子ってクラスメートに昼寝の邪魔をされたって初巳にチクってもいいんだぞ。」
 敬愛する女性を呼び捨てにされあまつさえ悪口を吹き込むと脅されて美世子は悔し涙を貯めて踵を返す。
 嗚呼。これで女子の好感度は地に落ちたな。まあ最初から地面スレスレだった好感度だ接地したからってたいしたダメージはない。寧ろ毛嫌いしている男に発情して身体を捧げる様を想像すると楽しくてたまらない。
 そうだな。学校に一人くらい性処理係が欲しいな。
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