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誘蛾灯
第1章 触れるな危険
 その俊樹兄ちゃんが結婚することになりお式に出席するために久しぶりにお爺ちゃん家に泊まり掛けで出掛ける事になった。三年生の時のオッパイ事件以来行き辛くて四年の時は友達とキャンプ、五年は事故の経過観察を理由に行かなかった。二年間が開けば恒例行事ではなくなる。なんだかだでご無沙汰して実に五年振りの帰省だ。いやはや田舎とは恐い所で五年経っても風景はこれっぽっちも変わっていない。五年前に撮った写真を昨日撮ったと見せられても素直に信じるだろう。流石に住人はそういうわけにはいかない。お爺ちゃんは矍鑠としたものだが少し腰が曲がった。もっと来れば良かったと後悔したがどうしようもない。そして変わったと言えば芳子姉ちゃんだ。高校を出て市内の食品メーカーに就職して今や立派なOLさんだ。髪を結い薄化粧に明るい口紅を差して別人の様だ。
 西東一族で囲んだ夕飯の席で芳子姉ちゃんも来年結婚すると聞いて俺の中で何かが崩れ落ちた。やっぱり俺は芳子姉ちゃんが好きだったようだ。
 皆に合わせて愛想笑いしながら飯を食べたがそれが肉なのか野菜なのか全然判らない。失恋のショックというのはかなり深刻なダメージを残すものらしい。早々に味のしない食事を切り上げて席を立つ。父ちゃんが何やら怒鳴っているが相手にしている余裕なんかない。兎に角芳子姉ちゃんの姿が見えない所に行きたかった。家を出て少し行った所に小さな山がある。遊歩道を進むと木製のテーブルとベンチが設えあるだけの質素な展望台という名の東屋がある。ベンチに座りテーブルに突っ伏すと溜め息が出る。頭を占めるのは芳子姉ちゃんだ。綺麗な女性になっていた芳子姉ちゃん。きっともてたろうし結婚も当然だろう。でも話が決まる前に噂だけでも流してくれればいいじゃないか。ガキの我が儘なのは百も千も承知で責めてみたりする。大好きな芳子姉ちゃんが幸せになるんだ。祝福しなきゃな。祝福?出来るかな?グルグル思考がループする。グルグル、グルグル。出口のない思考はいつの間にか闇に溶けていった。

 肩を強く揺すられて目が覚める。焦点の合わない目にボンヤリ映る人影は徐々に芳子姉ちゃんになっていく。
 「こんな所で寝てると風邪引くよ。」
 呆れ声で笑いかけながらスマホを操作し「展望台で寝てた。少ししたら連れて帰る。」と報告する。
 自分のスマホを見て驚いた不在着信の山だ。
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