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誘蛾灯
第1章 触れるな危険
 新幹線に乗るのにマナーモードにしてたの忘れてた。え!家を出て二時間以上経ってる。
 「皆心配したんだよ。何してんの?」
 まさか失恋のショックに浸ってたとは言えない。
 「腹ごなしで散歩してて寝落ちしたみたい。」
 話してない事が有るだけで嘘はついてない。
 「そっか。ここ風がきもちいいもんね。」
 芳子姉ちゃんが隣に腰掛ける。肩が触れそうになり半歩尻をずらし距離を取る。
 「なに?はずかしがってるの?このおませさんめ!」
 芳子姉ちゃんがヘッドロックしてくる。
 「わ!バカ!止めろ!」
 逃げようとするのを顔に豊かな胸が当たるのも気にしないで押さえつける。あんたに失恋したばかりの思春期の男になんて事するんだよ。愛犬にするように頭をワシャワシャと掻き回す手を掴んで必死に引き剥がす。更に頭を狙って伸びようとする手をテーブルに押さえつける。芳子姉ちゃんの手に触るなんてオッパイをチラ見したあの頃以来だから五年ぶりか。温かい感触にそんな事を考えてるといつの間にか芳子姉ちゃんの手は動かなくなっていて呼吸が荒くなっていた。
 「ごめん!痛かった?」
 詫びながら慌てて手を離すがその手は芳子姉ちゃんの両手に包まれる。え?なに?
 「翔琉の手、大きくてゴツゴツしててすっかり男の手だね。」
 芳子姉ちゃんは手を擦りながらじっと俺から目を離さない。ほんのり桜色に上気した頬に潤み蕩けた目。どう見ても普通じゃない。
 「芳子姉ちゃん。お酒飲んでる?」
 俺の問いに芳子姉ちゃんはニッコリ笑うと顔を近付け鼻先でハァ~っと息を吹き掛ける。
 「どう?」
 覚悟していたアルコール臭はなく歯磨き粉だろうか?爽やかなミントの香りがする温かい息が顔に掛かる。嘘だろ?今鼻に唇が触れた?
 「翔琉、格好良くなったね。」
 男って本当にバカだ。失恋した相手に誉められて有頂天になってる。
 「だろ?」
 おどけ茶化して答えるが芳子姉ちゃんの目が熱を帯びる。
 「さっきからドキドキが止まらないの。ほら。」
 芳子姉ちゃんの手に包まれていた手が引っ張られ柔らかい乳房に押し当てられた。
 え?え?なんで?オッパイ?やわらかい。
 「判るでしょ?」
 耳朶を舐める様な囁きに理性が飛び曲げた指先が乳房に沈んでいく。「アァン。」微かな喘ぎ声にハッと我を取り戻し手を引こうとするが手首を握られていて動かせない。
 
 
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