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誘蛾灯
第4章 転落危険
 口は開かなくても「何かありました」と全身で答えている。
 「力になれるかは判らないけど話してよ。」
 今度こそ落ち着いた声を出すのに成功する。芳子姉ちゃんは二度三度深呼吸してから意を決した様に口を開く。
 「実は、」
 芳子姉ちゃんの用件は借金の申し込みだった。
 芳子姉ちゃんが結婚したのは筆下ろしの後だからもう7年近く前になるのか。初めの数年は仲良くやっていたそうだがなかなか子宝に恵まれず徐々に旦那が冷たくなっていったそうだ。結婚五年目を過ぎるとチラホラと女の影が見え隠れしてくる。浮気を問い詰めても馬耳東風、蛙の面に水でぬらりくらりと鯰の様に逃げて捉えようがない。惚れた弱みで強く追及出来なかった芳子姉ちゃんにも問題があったのだろうが強く責められないと知り旦那の浮気は露骨になっていき遂に半年前「女に子供が出来たからそっちと暮らす」と置き手紙を残し出ていってしまった。出ていくなら離婚届でも置いていけばいいのに世間体が悪いし慰謝料も払えないから離婚はしないと訳の判らない理屈をメールで送り付けてきてそれっきりだ。確かにあの田舎では浮気されて亭主に逃げられたなんて知られたら風当たりが強いだろう。周りには単身赴任で渡米したと大嘘をついてやりすごした。
 もともと頭の良かった芳子姉ちゃんは一流とまではいかないがそこそこの会社に事務員として再就職して生活の基盤を建て直した。こう言っては悪いが子供が居なかったので意外に簡単にやり直しが出来た。
 やっと生活が落ち着いたと思った矢先、つい半年前の夜に厳つい男二人組が一枚の借用書を手に訪ねてきたそうだ。借り主は出ていった亭主だった。
 借用書の額面は700万円。連帯保証人の所に芳子姉ちゃんの署名捺印があったが当選芳子姉ちゃんの字ではなかった。借金した日付は出ていった後だから浮気相手にでも書かせたのだろう。そう説明しても借金取りは「お前の名前が書いてある以上お前が払え!」と脅してきた。
 「で?手元にあった数万円を取り敢えずと払っちゃったと?」
 小さく頷く芳子姉ちゃんに思わず溜め息をついてしまう。今まで何件も知り合い親戚に借金を申し込んで同じような対応をされてきたのだろう。芳子姉ちゃんは肩を落とすだけで顔には諦めの色が濃く浮かんでる。
 「多分皆に言われたとは思うけどお金払ったのは失敗だったね。」
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