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理想というまやかし
第2章 憂いの皇子

 見た目より純粋なんだろうな、と、りとが彼女の腰に腕を絡みつけたタイミングで、彼女の方も身体をすり寄せてきた。大きく開いたラウンドカットの襟ぐりから、禁忌の花園が覗き見える。手のひらに収まりそうなサイズ感の乳房は形が整っているのが薄手のワンピースの上からでも十分わかるが、彼女の無防備な振る舞いも、淫らなカーブを描いた腰から続く太もも、ふくらはぎにかけての線も、仕事中でなければ見入ってしまうかも知れない。


「ねぇりとちゃん。いつ私をお持ち帰りしてくれるんですか?」

「ごめんね。プライベートで関わっちゃダメって、決まりなんだ」

「お金は出すのに。それに私がヤッてもらいたいんだし、脱いでとか言いませんよぉ」

「もう、酔ってるだろ。そんな身体で、女の子が夜道帰っちゃ危ないから」


 りとは近くのテーブルを片付けていた真麻を呼びとめて、彼女がキープしたワインボトルを引き下げさせる。

 瞬間、真麻と指先が触れた。

 どこからかキャァっ、と黄色い声が上がって、また別の方向から夢見るような、それでいて嫉妬の視線が送られてくる。キッチンスタッフの女の子達がメイド姿なのは、多分、こういう狙いがあってのことだろう。よく分からないが。

 真麻が恥ずかしげに顔を伏せて、片付けたトレイを持ったまま、器用にボトルを抱えて逃げ帰っていった。
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