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理想というまやかし
第2章 憂いの皇子
隣に住むカップルがあの日ほど激しくない夜もある。毎晩睡眠を妨げられていればとっくに引っ越しているし、軽い物音くらいはイヤホンでまぎらわせられるから、悪感で食事も喉を通らない方が稀である。
だのに下手な具合のタイミングで、ここ数日、例の特殊なプレイを見た翌日に限って、りとは真麻と同じ時間シフトに組まれていた。
偶然でも重なると、このところりとに淡白だった真麻はやはり心配してくれている素振りを見せて、家に誘ってきた。
その日、愛乃は仕事を閉店時間まで入れていた。それは真麻の話によるものだが、電車に揺られて三十分、洒落た一軒家の集う住宅地を入っていったところに建つ彼女達の愛の巣に、その通り同棲相手の気配はなかった。
「ウチは隣との距離もある。余計なお節介かと思ったんだけど。隠してもないし、愛乃が帰ってきても、好きなだけ寝てくれて大丈夫だから」
「有り難う。音のことは何度も言うけど心配しないで。本当に偶然なんだ」
「じゃあご飯。私、ホットケーキが得意で……」
ロリィタファッションという重装備から薄手の部屋着に着替えた真麻は、彼女がキッチンを動く度にひらひら揺れるトップスの裾からちらと見える、尾てい骨に届く長さの髪をうなじに一つにまとめていた。小さな尻は、普段ことごとく膨らんだスカートのせいで、ここまで形が良かったのを初めて知った。ふと隣人の女を思い出す。彼女も、細い腰の下に豊かな尻が突き出ていた。