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理想というまやかし
第2章 憂いの皇子


「本当、心配性だね。何で私が真麻の誘いに乗ったか、分かる?」


 ボウルに入れたホットケーキミックスに卵を割ろうとしていた真麻の片手を持ち上げる。成人して二年も経つのにまだ少女に見えるあどけない目がビックリした色を湛えて、隣に立ったりとを見る。


「友達、……だから?」

「そ。友達だから」


 少なくとも食事や安眠に不自由はしていない。繰り返した甲斐あって、真麻はほぼ正解を寄越してきた。ただし満点ではない。


「それと」


 りとは真麻のもう一方の、卵を握っていた利き手も持ち上げる。彼女の両手を自分の両手に挟み込んで、これで大抵の女達は劣情にまみれた女の目になる、動揺する双眸をじっと覗く。


「油断してたら、オオカミさんに食べられちゃうよ?」
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