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理想というまやかし
第2章 憂いの皇子
真麻と夕飯でも一緒にしたいという、いつかのりとの思いつきは、こんなところで実現した。
そう思うと、あの隣部屋に住むカップルも、りとからすれば迷惑行為だけ働いたのではないかも知れない。
「ご馳走様。本当に美味しかった。あの愛乃さんがよく許してくれたね」
「私が楽しければ、それで良いんだって。ちょっと過保護なとこもあるけど、愛乃って優しいんだ」
「それで、どう?私といて楽しい?」
「うーん。久し振りに、りととゆっくり話したかなぁって」
「そっか。私は、真麻ともっと話したいよ」
赤と白とアイボリー。可憐なドレスのような彩りだった皿は、その中身を平らげたあとも、甘酸っぱい香りを残している。
真麻は食後の紅茶を淹れてくれた。苺とルバーブのフレーバーか、さくらんぼのシャンパンフレーバー。どちらが良いかと訊ねる彼女に、りとは前者と答えた。