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理想というまやかし
第2章 憂いの皇子
何故、胸を押さえた彼女のワンピースのファスナーに手を伸ばしたかは分からない。さっきまで同期の昼ご飯を不健康だと貶していた彼女のこと、りとの中で、真麻に限って身体の内側は問題ないだろうという先入観が先走ったのかも知れない。
「待って、りと、何でもないから……っ」
「何でもないなら逃げてみな。痛むの、どっち?危ない方なら、救急車呼ぶけど」
「大袈裟だって!胃でも心臓でも胸でも、たまには痛みもするでしょ」
ソファの座枠に真麻の脚を押さえつけて、首を横に振る彼女の上体を暴いていく。重装備の人形は身軽な少女の姿に戻って、もの凄く嫌がる一方で、声も上げない。何度想像したかも分からない肩が露わになって、鎖骨に続く乳房の谷間が現れる。キャミソールを押し上げる膨らみは、いじらしいほど誘惑的だ。
こんな口実でもない限り、きっとここまで見られなかった。りとにはこうも嫌がって、あのミルクティーベージュの髪の女には、喜んで自ら脱ぎもするのか?
ブラジャーのホックを外すと、最後の垣根の向こうだけ、想像とあまりに大差があった。
触れたくて愛でたくて狂おしかった、出逢って三ヶ月の友人の裸体。
慈んでくれる相手を必要として母親との生活から逃げてきたはずの真麻の乳房は、先端をくるんだガーゼに血が滲んでいた。
りとが言葉を失っていると、真麻は見栄を暴かれでもした涙目で、顔を逸らせた。
「ね、大丈夫でしょ?……ただの怪我なんだ」
「愛乃さん?」
決して被虐趣味はない、愛乃もノーマルなセックスを好む。
それだけ言うと、手当てし直すから少しの間そっち見てて、と真麻が言った。
りとは真麻がバッグを探り始めると、万が一のために扉を見張っておくことにした。